出産物語②私は立ち会い出産を望まなかった。
前回までのストーリはこちら↓
さて、いよいよ出産だ。
夫に連絡。
「入院したよ。間もなく出産。話し合った通り、立ち会いは無しね。生まれたら連絡するから、ビールでも飲んで待ってて。」
私は立ち会い出産を望まなかった。
出産は、夫にとっても大事な瞬間でもあるので、一応聞いてみたところ、
「俺がいることでお前が少しでも楽になるなら何でもするよ!」ということで、出産の瞬間にその場にいたい訳ではないと分かり、出産時にテメーが私の手を握っても、何の助けにもならないことをやんわりお伝えし、立ち合い出産はしないことになった。
プロだけに囲まれて、
心置きなく苦しい顔をして、
好きなだけ痛い痛いと叫び、
全てを委ねて安心して出産したかった。
そこに、ど素人の夫がオロオロしてたら気が散ってしょうがない。
「頑張って!」なんて言われたら、
「とっくに頑張ってるわオラー!!」と殴ってしまいそうだし、
出産の血みどろのシーンを見せたくないし、
うっかりウ〇チが出ちゃったりしたら絶対に見られたくないし。
あと、出産は女だけに与えられた特別な仕事のような気がして。
世の中の殆ど全ての事は男女どちらでもできるけど、”産む”ということだけは女にしかできない。
私はそれに一人で立ち向かいたかった。
立ち合い出産がスタンダードな今、コロナや仕事のせいで立ち合い出産が出来なくて、落ち込んでいる人も多いのだろう。
でもね、子どもが生まれたら、毎日大イベントの連続。
出産は単なるその中の一つに過ぎない。
出産に立ち会うかどうかで子どもへの愛情は1ミリも変わらない。
大事なのはそこじゃない。
もちろん、立ち合い出産をして夫婦でその瞬間の感動を分かち合うのは素晴らしい。
私の周りで、立ち合い出産は7~8割くらいかな。
話しは戻ります。
看護師:「陣痛の間隔はどのくらいですか?」
私:「陣痛って、自分で気付きますか?」
看護師:「は?気付かない人はいないと思いますけど…え?痛くないんですか?」
私:「お腹が少し張ってる感じはあります。」
看護師:「いやいや、そんなもんじゃないわー。データ取りましょう」
と言って、お腹のあちこちにペタペタと何かを貼り、機械に繋げて、陣痛の波の大きさと間隔を見るという。
看護師:「普通の陣痛来てますよ…。本当に痛くないんですか?」
先生もやってくる。
ごにょごにょ話している。
医師:「何で痛くないんですかね~。痛みに強い方ですか?」
私:「いえ、激弱です。」
夫は仕事を早退し、病院に駆けつけて、私の手を握って帰っていった。
とりあえず私は病院で出された夕飯を食べる。
分娩前は食べ過ぎない方がいいということで、量が少ない。
おにぎりとか隠し持ってくればよかった。(泣
携帯がピロ~ンと鳴る。
夫からだ。
「〇〇さん(大学院時代の先輩)と前祝いしてまーす!」
と、生ビールと笑顔の夫の写真が送られてきた。
普通の妻なら、ここでブチ切れるんだろう。
でも私は、美味しそうなビールと夫の超絶笑顔に嬉しくなり、
「おぅよ!待ってろ!」と返した。
いよいよ私の一生で最大の仕事が始まる!
定期的に子宮口の確認をされる。
もう10㎝に達した。
どうしましょうかと看護師さんたちが相談している時、
体に「ドン」という衝撃があり、
突然、激痛が走った。
!!!!!!
これかーー痛い!痛すぎる!
分娩台に上がり、スタート!
「ハイ息んでー!」
一瞬痛みが引いて、また超絶痛くなって、全身で息んで。
TVでよく見るようなギャーギャー騒いだり、
痛い―!なんて叫んでいられない。
声を出すと力が逃げてしまうから、声を出さずに出来るだけ全ての力を息む方に使う。
これを繰り返しながら90分が経過した頃、息子は出て来た。
「あ”ーーやっと出て来た。グッタリ」(感動より、終わった嬉しさでいっぱい)
看護師:「元気な男の子ですよ~」
赤ちゃん:シワシワ~
こんなに小さい人間を見るのは初めて。
爪の先まで精巧に出来ている。
ぉお~すげー
午前2時という真夜中だったけれど、出産の一報は、夫を通じて夫の両親、夫の姉、私の両親、祖母、妹に届けられたらしい。
みんなに祝福された息子(シワシワ)を見ると、誇らしかった。
私は大仕事の後で喉がカラカラ。
とにかく生ビール(大)が飲みたかった。